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人を増やす前に考えたい。「仕組み化」の全体像と5つの実践ステップ

執筆者の写真: 田中哲平
田中哲平
8月27日
読了時間: 13分
人を増やす前に考えたい。「仕組み化」の全体像と5つの実践ステップ


「人が足りない。だから採用しよう」

業務が回らなくなったとき、多くの企業が最初に考える解決策の一つです。


もちろん、本当に人を増やすべき場面はあります。一方で、人手不足に見えている問題のすべてが、採用によって解決するとは限りません。


業務の順番を変える。担当者の組み合わせを見直す。誰でもできる状態まで標準化する。システムへ任せられる部分を自動化する。


こうした「仕組み化」によって、既存のリソースだけでも組織の生産性を大きく変えられる可能性があります。


重要なのは、単純に仕事を減らしたり、人の代わりにシステムを入れたりすることではありません。


人が本当に価値を発揮すべき仕事を見極め、その仕事へリソースを集中できる状態をつくること。


この記事では、Triggerが複数の事業運営を通じて実践してきた経験をもとに、「仕組み化とは何か」から、属人化・標準化・自動化の考え方、実際に取り組むための5つのステップまで体系的に解説します。



< 解説者 >

田中哲平 Trigger株式会社 CEO

エンターテインメント領域から事業をスタートし、その後、物流、採用、マーケティング、業務設計、システム開発など複数領域で事業運営を経験。

現在は、企業の採用課題や業務課題に対して、業務フローの設計からシステム開発まで領域を横断した支援を行っています。

自社事業では、年間3,000名を超える応募者への対応フローや、報酬計算・請求をはじめとするバックオフィス業務の仕組み化・自動化を実践。

「できる人が頑張る組織」ではなく、人と仕組みの役割を設計することで、再現性のある事業運営をつくることを重視しています。



■ 目次



なぜ今、「仕組み化」を考える必要があるのか


  • 売上をつくらなければならない。

  • 顧客に対応しなければならない。

  • 人が足りなければ、自分たちで手を動かさなければならない。


特に事業の立ち上げ期では、「仕組みを考える時間があるなら、目の前の仕事を進めた方がいい」と感じることも多いと思います。


実際、短期的にはそれで成果が出ることもあります。


しかし、その状態を長く続けると、


「できる人がやった方が早い」

「この仕事はあの人しか分からない」

「新人に教えるより自分でやった方がいい」


という業務が少しずつ増えていきます。


その結果、重要なメンバーが抜けると仕事が止まり、新しい人を採用しても教育に時間がかかり、さらに管理コストが増えていく。


そして、忙しくなればなるほど仕組みを整える時間がなくなり、さらに属人化が進みます。

これは、一度入り込むと抜け出しにくい循環です。


だからこそ、組織が大きくなってから一気に整えるのではなく、小さな段階から少しずつ「どう回るか」を設計しておくことが重要だと私たちは考えています。



属人性の高い仕事と、仕組みで回る仕事の両方を経験した


私自身、最初から仕組み化を重視していたわけではありません。


もともとは、ダンサーやインフルエンサー関連など、エンターテインメント領域の仕事に関わっていました。

この領域は、比較的属人性の高い仕事です。


起業初期には、ダンススタジオやタレント事務所などの外部顧問として関わることもありましたが、自分自身が提供している価値を、そのまま社内の別の誰かへ移すことは簡単ではありませんでした。


自分の経験、感覚、判断、人間関係そのものが価値になる仕事では、「この人だからできる」という要素を完全になくすことはできません。


一方、その後に物流をはじめとする実業へ領域を広げると、まったく異なる経験をしました。


もちろん経営者としての判断やリーダーシップは必要です。

しかし、日々発生する業務の多くは、正しく設計すれば他の人でも再現できます。


この、


「人そのものが価値になる仕事」と「仕組みによって再現できる仕事」


の両方を経験したことで、仕組みの重要性を強く意識するようになりました。


すべてを仕組みにする必要はない。

しかし、仕組みにできる仕事まで特定の人へ依存させる必要もない。


この切り分けが重要です。



「人が足りない」と感じたら、業務量だけを見ない


人手不足を感じたとき、単純に「仕事量が多いから人が必要だ」と判断してしまうことがあります。


しかし、私たちは業務量だけではなく、業務の組み合わせ方も重視しています。


例えば、Aさんが担当している仕事をBさんへ移すだけで、前後の工程とのつながりが良くなり、全体の作業時間が短くなる場合があります。


仕事の順番を変えるだけで、待ち時間がなくなることもあります。


同じ情報を複数箇所へ入力しているなら、一度の入力ですべてへ反映できるようにした方がいいかもしれません。


確認作業が多いのであれば、そもそも間違った入力ができない設計に変える方法もあります。


見るべきなのは、例えば次のようなポイントです。


  • 本当に必要な業務なのか

  • 同じ作業を重複して行っていないか

  • 担当者の組み合わせは適切か

  • 業務の順番や時間帯は適切か

  • 人が判断する必要のない処理はないか

  • 自動化・システム化できる部分はないか


つまり、


「仕事が多いから人が足りない」と決める前に、現在の業務構造そのものを疑ってみる。


ここが仕組み化の入口です。



優秀な人ほど、属人化の中心になりやすい


優秀な人ほど、属人化の中心になりやすい

属人化は、能力が足りない人が多い組織だけで起こる問題ではありません。

むしろ、優秀な人がいるからこそ起きることがあります。


仕事が早い。

判断も正確。

任せれば安心。


すると、「この人に任せた方が早い」と仕事が集まります。


本人も仕事が早いため、予定より早く終わった分、さらに別の仕事を引き受ける。


その結果、他の人より担当業務の量も幅も大きくなります。


すると、


優秀だから任せる→ 仕事が集まる→ その人しか分からないことが増える→ さらにその人へ仕事が集まる


という循環が生まれます。


個人として見れば、とても生産性が高い状態です。


しかし組織として見ると、その人が休んだり退職したりした瞬間に大きなリスクになります。


だからこそ、経営側は突出した一人の生産性だけを見るのではなく、組織全体の平均値や中央値を見る必要があります。


一人だけ極端に速いのであれば、「その人は優秀だ」で終わらせず、


なぜ速いのか。

他の人との違いは何か。

その方法を標準化できないか。

そもそもの業務設計に問題がないか。


まで考える。


個人の能力を、組織の能力へ変えていく視点が必要です。



仕組み化とは、マニュアルを作ることではない


「仕組み化」という言葉から、マニュアルや手順書を想像する人も多いと思います。


もちろん、マニュアルは重要です。


しかし、マニュアルが存在することと、仕組みが機能していることは同じではありません。


例えば、担当者が業務中に分からないことに直面したとします。


「そういえばマニュアルがあった」

と思い出し、保存場所を探し、ファイルを開き、必要な箇所を探して確認する。


この時点で、「マニュアルを見よう」と判断する行為と、実際に探すための行動が発生しています。


理想は、その情報が必要になった瞬間に、必要な内容だけが自然に目の前へ出てくる状態です。


次にやるべき作業が表示される。

条件に応じて処理が自動で変わる。

例外が発生したときだけ人へ通知される。

間違えてはいけない項目には、そもそも誤った入力ができない。


こうして、人が一つひとつ判断しなくても業務が正しい方向へ進んでいく。


そこまで設計されて初めて、私たちは「仕組みとして機能している」と考えます。



自動化は「動けばいい」のではなく、「安心して任せられるか」


Triggerでも、さまざまな業務を自動化しています。

代表的な例の一つが、応募者対応です。


年間3,000名を超える応募がある状況で、採用担当者がすべての応募者と個別に連絡を取り、日程を調整し、面接へ進めるかを確認していくのは現実的ではありません。


そこで、応募受付から日程調整までを仕組み化し、その過程で面接へ進む応募者のスクリーニングまで行える状態をつくっています。


これによって、人が対応しなくてもよい工程に使っていた時間を、本当に人が対応すべき部分へ戻すことができます。


報酬計算や請求業務も同様です。

一方で、ここには重要な考え方があります。


「計算できるシステム」を作るだけでは、ほとんど意味がありません。


計算そのものなら、表計算ソフトでもある程度実現できます。


本当に難しいのは、


そのシステムへ安心して業務を任せられる状態をつくることです。


入力データは正しいのか。

例外が発生したらどうするのか。

誤った計算を検知できるのか。

どこまで自動化し、どこから人が確認するのか。


特に報酬や請求など、ミスの影響が大きい業務では、この設計が不可欠です。


自動で動くことと、安心して任せられることは別物です。



人と仕組みの役割は、「駅」と「レール」で考える


人と仕組みの役割は、「駅」と「レール」で考える

仕組みを設計するとき、私が特に重視しているのが、


「絶対に人がやるべきことは何か」


を先に考えることです。


イメージとしては、人が担当すべき重要な仕事が「駅」で、その駅同士をつなぐ部分が「レール」です。


例えば、


顧客との重要な対話。

複雑な判断。

企画や創造。

関係構築。


こうした、人が価値を生み出す仕事を駅とします。


その駅へ必要な情報を届ける。


終わった結果を次の担当者へ渡す。

定型的な処理を行う。

進捗を管理する。


こうした駅と駅の間は、できるだけ標準化・自動化・システム化されたレールでつなぐ。


この考え方をすると、「何でも自動化すればいい」という発想から離れることができます。


仕組み化の目的は、人をなくすことではありません。


人にしかできない仕事へ、人の時間を集中させることです。


Triggerでも、顧客やクライアントとのコミュニケーションは、今でもかなり泥臭く行っています。


必要であれば直接足を運び、電話をし、コミュニケーションを取る。

むしろ、その時間をつくるために、それ以外の仕事を効率化しているとも言えます。



実践|業務を仕組み化する5つのステップ


仕組み化5STEP

では、実際に何から始めればよいのでしょうか。


ここからは、私たちが業務を見直す際の考え方を5つのステップに整理します。


STEP1|時間と精神的負荷が大きい業務を見つける


最初から会社中の業務を完璧に整理する必要はありません。


まずは、

  • 最も時間を取られている業務を3〜5個

  • 精神的な負荷が高い業務を3〜5個

書き出してみてください。


ここで「精神的負荷」も見ることが重要です。


一回の作業は短くても、「間違えてはいけない」「毎回確認が必要」「やるたびにストレスがかかる」という業務は、改善効果が大きい可能性があります。


STEP2|業務を細かく描き、全体と細部を行き来する


対象を決めたら、その業務がどのような流れで進んでいるのかを書き出します。

その際、全体のフローを見るだけでは不十分です。


現場ではどこで迷うのか。

どんな例外が起きるのか。

誰が何を見て判断しているのか。

入力後に何が起きるのか。


「そんな細かいところまで見るのか」と思うくらいまで、想像してみます。


私自身、仕組みを設計するときには、


全体を俯瞰する視点細部を徹底的に見る視点実際に使う人の視点


を意識的に行き来しています。


設計上は正しくても、現場の人が使えなければ仕組みとしては機能しません。


STEP3|「人がやるべき仕事」を決める


次に、先ほどの「駅」を決めます。


その業務の中で、

  • 人とのコミュニケーションが価値になる

  • 複雑な判断が必要

  • 創造性が必要

  • 結果に大きく影響する

といった部分を見極めます。


ここは、無理に自動化する必要はありません。

むしろ、人が最大限の価値を発揮できるように残しておくべき部分です。


STEP4|標準化・簡略化し、自動化できる部分を探す


次に業務を、

  • 絶対に外せない

  • 効率化できる

  • 自動化できる

  • 他の人へ任せられる

  • なくせる

といった形で整理します。


ここで私たちは、最初から「なくすこと」だけを目的にはしません。


一見不要に見える工程でも、その後の仕事を成立させるために必要なことがあります。

いきなり削除すると、別の場所で問題が生まれることもあります。


まず標準化する。

簡略化する。

ベテランしかできなかった仕事を、新人でもできる状態にする。

機械的に処理できるところを自動化する。


こうして業務全体を整理すると、


「そもそもこの工程はなくても問題なかった」


というものが自然と見えてきます。

その段階でなくせばいいのです。


STEP5|浮いたリソースを、本当に価値のある仕事へ戻す


最後に重要なのが、仕組み化によって生まれた時間をどこへ使うかです。

単純に「業務時間が10時間減りました」で終われば、仕組み化の効果を十分に活かせていません。


顧客とのコミュニケーションへ使う。

営業活動へ使う。

新しい企画を考える。

既存サービスを改善する。

社員教育へ使う。

新しい事業へ挑戦する。


人にしかできない仕事へ時間を戻して初めて、仕組み化が事業成果へつながります。



それでも、人を増やすべきケースはある


ここまで仕組み化について説明してきましたが、人を採用すること自体を否定しているわけではありません。


むしろ、


  • 売上へ直接つながる仕事

  • 人とのコミュニケーションそのものが価値になる仕事

  • 判断力や創造性が必要な仕事

  • 現在の組織にはない能力を取り入れたい場合


などでは、人を増やす意味は大きいと考えています。


重要なのは順番です。


私たちが大切にしているのは、


「既存のリソースを最適化してから、人を採用する」


という考え方です。


例えば新規事業を始めるときも、Triggerでは新規事業専任の人材をいきなり増やすのではなく、既存事業の業務を任せるためのリソースを追加することがあります。


そして、既存事業を担当していた人材を新しい挑戦へ移していく。

ロケット鉛筆のように、後ろから人材を押し出していくイメージです。


新しいことを始めるたびに組織を膨らませるのではなく、まず今持っている力の使い方を変える。


そのうえで足りない力を採用する。

この順序によって、組織を必要以上に重くせずに成長させることができます。



まとめ|仕組み化は「人を減らすため」ではなく、「人の価値を高めるため」


仕組みづくりは、短期的には売上を直接生み出さないこともあります。


だからこそ、


「そんなことを考えている時間があるなら、まず手を動かそう」


となりやすいものです。


しかし、それを続けていると、いつの間にか「動き続けなければ成果が出ない組織」になってしまいます。


重要な人が抜ければ止まる。

採用しても教育に時間がかかる。

人が増えれば管理する人も増える。

そして、その問題を解決するために、また人を増やす。


この循環に入る前に、一度立ち止まって「どう回るか」を設計することが重要です。


仕組み化とは、人をなくすことではありません。

マニュアルを増やすことでもありません。

システムを導入することそのものでもありません。


人がやるべきことと、仕組みに任せることを切り分け、組織全体が自然に回る状態をつくること。


そして、そこで生まれた余白を、人にしか生み出せない価値へ戻していく。

それが、私たちの考える仕組み化です。


人を増やす前に、まず今あるリソースを最適化する。


もし業務が回らず、人手不足を感じているのであれば、最初の一歩として、


「時間を最も取られている業務」と「精神的な負荷が最も高い業務」を3〜5個ずつ書き出す


ところから始めてみてください。

そこに、組織を変える最初のヒントが隠れているかもしれません。

田中哲平

この記事を書いた人

田中哲平

Trigger(株) CEO

18歳から事業活動を開始し、24歳でTrigger株式会社を設立。人材・採用、システム開発、マーケティング、物流など複数領域での事業経験をもとに、人と企業が前へ進むためのキッカケと仕組みづくりに取り組んでいます。

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